個人事業主の医療費控除の確定申告
医療費控除とは
医療費控除とは自分又は自分と一緒に生活している配偶者やその他の親族のために医療費を支払った場合、所得税の計算において課税の対象となる課税所得金額を算出するにあたり一定の要件で所得控除の一種としてその年中(1月1日~12月31日)にかかった医療費分が控除されることをいいます。
租税法律主義の原則から、課税標準、税率などの課税要件などは法律で定められなければなりません(憲法84条)が、医療費控除については所得税法73条で定められています。
自営業者など国民健康保険の被保険者として医療費の公的補助を受けている人でも確定申告をして医療費控除を受けることで節税(税金の取り戻し)が可能です。
といっても、現実には領収書をとっておくなど面倒なイメージがある、あるいは支払った医療費によっては医療費控除を確定申告する労力に見合うだけの額は戻ってこないなどの理由のためか、実際に確定申告をしている人は少ないとも聞きます。
しかし、高額な医療費を支払った場合にはそれなりの税金を実際に取り戻せるのですから、節税対策の一環として一度積極的にこの制度を見直してみてはいかがでしょうか。
もっと言いますと、自分には必要がないと思えば、実際に医療費控除を受けなくてもいいと思います。
ただし、こうした制度が存在するということだけでも知っておく価値はあると思います。将来この知識がいつ役立つかは分かりません。
税務署やその元締めである国税庁などの方から積極的に勧めてくれる or 教えてくれることは期待できませんから。
医療費控除を理解するための所得税計算の基礎知識
医療費控除について理解するには、所得税の計算の仕方に関する基礎的な知識があると分かりやすいです。
そこで、まず医療費控除の理解に必要な範囲で所得税の計算方法について簡単に説明します。
- 所得税は課税所得金額という所得税計算の基礎となる額に法定の税率をかけることで算出されます。
所得税=課税所得金額×税率(例えば、10%) - この課税所得金額の算出にあたってはまず事業によって生じた年収から必要経費を差し引いて事業所得をもとめます(所得税法27条)。
事業所得=事業によって生じた年収-必要経費 - この事業所得からさらに医療費控除、社会保険料控除など所得控除と呼ばれる額を差し引くことで課税所得金額が算出されます。
課税所得金額=事業所得-医療費控除などの所得控除額
つまり、医療費控除を受けることで所得税を算出するための基礎となる額が減るので、結果として税金が安くなるということになります。
医療費控除が受けられるための要件
医療費控除が受けられるためには次の4つの要件を満たす必要があります。
- 自分又は自分と一緒に生活している配偶者やその他の親族のために医療費を支払ったこと
- その年の1月1日から12月31日までに支払った医療費であること
- 年間の医療費が一定額を超えていること
- 法定の医療費であること
上の第1・第2の要件はあまり問題はないと思いますが、問題なのは第3・第4の要件です。
このうち第3番目の要件である「一定額」とは10万円 と 総所得金額等の5%とのいずれか少ない方の金額です。
その年中(1月1日~12月31日)に支払った医療費でこの金額を超える部分が医療費控除額となります。
正確には、医療費控除額は次の算式により算出されます。
医療費控除額=その年中(1/1~12/31)に支払った医療費-保険金等で戻ってきた金額-10万円(又は総所得金額の5%)
※ただし、最高200万円まで
次に第4番目の要件である「法定の医療費」とは「医師又は歯科医師による診療又は治療、治療又は療養に必要な医薬品の購入その他医療又はこれに関連する人的役務の提供の対価のうち通常必要であると認められるもの」(所得税法73条第2項)などです。
具体的には、歯医者の治療、マッサージ指圧・はりなどの施術、入院・通院時に使用した電車・バス・タクシー代や入院時の食事代などは含まれますが、治療を目的としない健康診断や病気予防のためのビタミン剤などの購入費、自家用車を使用する場合のガソリン代・駐車場料金などは含まれませんのでご注意下さい。
医療費控除のための手続
医療費控除を受ける場合には、医療費控除に関する事項を記載した確定申告書を提出します。
その際、医療費の支出を証明する書類、具体的には領収書などを確定申告書に添付するか、提示します。
領収証がたくさんある場合には封筒に入れ、添付または提示します。税務署にもそのための専用封筒が用意されているのでこれを利用するのもいいでしょう。
したがって、医療機関等の領収書は日頃から保管しておく必要があります。
なお、どうしても領収書が入手できない場合や領収書を失くしてしまった場合には、治療を受けた者の氏名、支払年月日、支払先、支払金額などを記載した記録があれば大丈夫です。
また、領収書のない交通費もその日時、経路、運賃をメモしておけば大丈夫です。
ただし、税務署に対してきちんと説明したうえ納得してもらう必要はあります。
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